こんにちは、ロストマン(@the_lost_man77)です。
今回は日本百名山最難関に部類する日高山脈にある幌尻岳の登山した時の様子を書いていきます。
幌尻岳まではどのコースも非常に距離が長く、一般的な振内コースは本格的な渡渉装備が必要となりますが、そのような装備が容易できなかったので、今回は幌尻岳山頂までを縦走するチロロ林道コースを1泊2日の山荘を利用する計画を立てて行ってきました。
この時の山荘の営業が9月末日までなので、この年はこれが幌尻岳に挑戦する最後の機会だったので運が良かったです。
幌尻岳とは
幌尻岳(ぽろしりだけ)は、北海道日高振興局の沙流郡平取町と新冠郡新冠町にまたがる標高2,052 mの山。日高山脈の主峰であり、日本百名山に選定されている。日高山脈襟裳国定公園に含まれ、山頂には二等三角点(点名「幌尻」)がある。山名はアイヌ語で「Poro(大きい)sir(山)」を意味する。
1,300万年前の造山活動で生じた。山体上部には第四紀の氷期に形成されたカールが認められ、2007年、「幌尻岳の七つ沼カール」として日本の地質百選に選定された。ナキウサギ、クマゲラなどが生息している。平取町の二風谷地域などでは遠くから目立つ道しるべ的役割を果たしていたため、古くからカムイとして祀られていた。
出典: ウィキペディア(Wikipedia)
登山コース
チロロ林道コース
日高町の国道274号からチロロ林道に入り、千呂露川と二岐沢が合流する地点から二岐沢沿いに歩く。尾根に取り付いてヌカビラ岳・北戸蔦別岳・戸蔦別岳を経由し、左手に七つ沼カールを見ながら山頂に至る。このルートは途中に山小屋はない。
出典: ウィキペディア(Wikipedia)
YAMAPから登山コースの地図をアプリにインストールしておきましょう。
登山時期
登山前日
チロロ林道コースの入口にやってきました。ここの入口はグーグルの地図に記載されていなかったので探すのに苦労しました。駐車場まで約8.2kmの長いダートを進みます。
実はここに来る前に「幌尻山荘」に29日に宿泊する予約をとる為に麓にある「とよぬか山荘」に行ってきました。「幌尻山荘」の宿泊料金は1泊2000円です。
管理人さん曰く、最近無理をして日帰り登山に挑戦する人が多く、21時過ぎても下山できない人が増え警察沙汰になっている事があるそうです。やはり1泊は最低でもした方が良いみたい。
そしてチロロ林道コースから幌尻岳まで縦走した後に幌尻山荘に宿泊する人は僕ぐらいのようで、管理人さんは驚かれていましたが、皆さんテン泊か日帰りしているんですかね。強者すぎます。
また、もうひとつある新冠陽希コースは豪雨の影響で道が崩壊して当分通行禁止になっているようでした。
忘れないように予約のついでにとよぬか山荘で山バッジ(500円)を購入しておきました。
道はガタガタで車のライト以外は真っ暗で熊や鹿が出てくるではないかと冷や冷やしながら進んでいたらヤマシギが登山口を案内するように先導してくれました。
進んでもずっと前ばかりに行くから可愛いやつです。
途中ちょっとした渡渉もあったり。
R274号を逸れて未舗装の道をゆっくり走って1時間程で登山口に到着しました。
ここに来るまでは辺りには街灯もなく完全に闇で、ある場所はすぐ横が崖だったりしてハンドル操作を間違えると真っ逆さまのような場所が数カ所あり、慎重に進むことを余儀なくされました。
車が何台か止まっている場所があったので駐車場だと確信してそこで今晩は車中泊。
19時過ぎたころに闇の中から鈴の音が聞こえて、恐らくソロで日帰り登山をしてきた人が下山して来たようでした。管理人さんが言うように早速やっちまった人が出たか~と思いながらも、自分も下手したらこの時間まで彷徨ってしまうのではとビビってしまいましたね。
完全な闇の中で道も不確かな状態、しかも熊がいつでるかわからない場所で一人で山を歩くのは絶対やりたくないです。
1泊2日とはいえ明日の登山はいつも以上に気を引き締めて行こうと思いながら就寝。
登山開始
AM05:04 駐車場には車が5台とバイクが止まっていました。最大でも車が10台くらいしか止められそうにありませんね。
第2ゲートから先は車で行けないので脇から通って進みます。
幌尻岳は日本百名山で最難関、今まで登って来た山とはどのような違いがあるのか初見なのでさっぱり。
しかもこの日高山脈には最近人を襲った熊が出ると言われているのでかなりびびっていました。丁度同じ時間から登る人がいたので不安だったので一緒について行くことに。
今日ここから登るのは僕らだけのようで、駐車場にあった車は前日の人のようです。
約3.1kmの長い林道を歩き続けます。
AM05:51 北電の取水ダムに到着。
取水ダムの脇に看板が設置してありその先から本格的な登山道になります。
多少生い茂っている林道ですが、まだ歩きやすいのでスタスタ進みます。
二ノ沢を何回か渡渉を繰り返します。
またピンクテープがわかりづらい所にあったりするので何度か見失って立ち止まったり、軽く引き返したりしながら進みました。
AM06:52 看板から1時間程歩くと二ノ沢出合に来るのでそこからは急登になります。
ロープを使う場面も出てきましたが、ここはそこまで大変ではなかったです。
AM7:43 トッタの泉に到着。
この先に湧水がある場所がないそうなのでここで汲んでいき、ほぼノンストップで来たので少し休憩を取りました。
梯子が続いて2か所設置してあります。ここまで来ると尾根伝いに出てハイマツがお出迎え。
AM8:44 長い林道と急登の連続で大分疲労しましたがようやくヌカビラ岳まで登って来られました。
一緒に登って来たおじさんはピパイロ岳のルート上にある1967峰を目指すようなのでここでお別れ。
そして金庫岩っぽいやつの後ろにそびえ立つのが今日目指す幌尻岳です。
まだまだ遠いな。
ここからハイマツが密集した地帯を歩くことになり、手でかき分けていかないと進めないです。
藪漕ぎが多いので、人が通った痕跡と方角を頼りに進みます。ここらはあまりピンクテープがないです。
そうこうして進んでいるとソロで来ているテン泊装備のおじさんがいたので「熊が出ませんでした?」聞いてみたら「熊が出るなんてまずありえない!」と自信満々に返答が来たので逆にフラグなのではないかと不安に。
ですが熊スプレーも装備しているので、もし遭遇したら吹きかけるだけです。
もし効かなかったらその時は覚悟をするしかなさそう。
綿毛のチングルマみっけ。
しばらく落ち着いて歩いて行けそうです。大自然を感じられて気持ちが良い。
日高の大自然にそびえ立つどっしりとした構えの幌尻岳はまだまだ先ですが、迫力があってカッコイイ良いですね。
AM9:39 北戸蔦別岳に到着。
看板の裏にテントが張ってあり、北海道でソロでテン泊はやっぱり今の自分ではなかなかできないし恐い。
ハイマツは続くよ、どこまでも。
途中不安定な急な岩場を登ったりで体力を消耗してきます。
熊の糞?これを見るとここはヒグマ密集地であることを再確認させら少しビビる。
北戸蔦別岳と幌尻岳の方角を指している看板がありました。ここから幌尻山荘に下るルートがあるのですが看板には何故か書かれておらず。
AM11:18 トッタベツ岳に到着。
しばらくすると雨がポツポツと降ってきたので引き返そうか30分程様子を見て、大丈夫と判断し先に行くことに決めました。
これが七つ沼カール。
夏場は雪解け水が沼を形成しますが、この時期はすでに枯れていたので沼の形だけ残っています。
またトッタベツ岳と幌尻岳を結ぶ見事なカールは圧巻です。
かなり狭い岩場で捕まる場所もないので足を滑らせたらジエンド。
カールの最後は背丈ほどあるハイマツ&急登コンボ。
バッグが引っかかったり、 これまで以上に力をかけてかき分けて いかないと進めないくらい松が密集していたのでここが一番挫けそうになりました。
それでもペースを落としゆっくり一歩ずつ登っていればいつか終わると言い聞かせて苦しかったですがなんとか稜線まで来ました。
こちらから見る七つ沼カールも素晴らしい景色ですね。
ここから幌尻岳までは大した登りもないです。
ここで20代前半の男性とすれ違う。
大きなリュックを背負っていたのでテン泊でもするのでしょうか。
幌尻岳山頂
PM13:40 幌尻岳山頂に到着。
林道歩きから渡渉に急登、熊が出る恐怖、狭い岩場、ハイマツ漕ぎと滅茶苦茶長く苦しい道のりでしたがこうして無事に山頂にこられて良かったです。
天気も悪化しなかったので幸運ですね。
三角点にタッチ!
福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件の追悼碑が立ててありました。日高山脈はヒグマの密集地であるのでもし遭遇したら冷静に適切な対応ができなければいけないです。
もう少し山頂でゆっくりしていたかったですが幌尻山荘まで向かう時間を考えたら15分程しかいられなかったです。
暫く稜線を下っていくので体力的には大丈夫です。
5時間前にいたヌカビラ岳が見えます。
さらに下ると先程大苦戦していたカールを横から見ることが出来ます。
額平川コースから登って来たご夫婦に会い、体力的に山頂まで行けなかったから引き返してきたそうです。先程の20代前半らしき男性は額平川コースからチロロ林道コースの登山口まで行くらしく、そうなったらバスはないのでどうやって帰るのだろうと思うのでした。
稜線が終わり急な傾斜を下る最中、もう限界がきたのか左の足首が強く痛みはじめ、ご夫婦にあっさり越されてしまいました。
そんな中命の水と書かれた看板がありましたが、ルートを逸れることになるので寄ることはしませんでした。この時結構時間が押していたから、ヒグマがいる山で日が暮れるのは勘弁。
コブだらけの木だ。こういうクリーチャーいそう。
キノコも見ながら無理しない程度に下ります。
PM16:43 幌尻山荘に到着。
とても深い山奥にこんな立派な小屋があって安心できますね。基本的に幌尻山荘では食事と寝具の提供はしていないのでそれらを担いで登山することになります。そして建物の外にリュックと食料を置かなければなりません。
外には沢から引いた水が使えるのでそこで体を拭いたり、洗濯を済ませます。一応水も直接飲めるらしいですが、エキノコックスが怖いので浄水器を使いました。
今日は営業最終日なので宿泊客は僕含めて6人でした。皆さん額平川コースから来ていて日本百名山を目指していました。
夏のピーク時には人でごった返して寝る場所がないらしいですが、この日はガラガラなので特別にリュックと食事の持ち込みOKでした。
ふと壁にあるポスターには70代のおじいさんが幌尻岳山頂付近で行方不明のままだというからやはり熊に襲われたのだろうか。
今日はかつてない疲労だったので、ご夫婦にお酒の席に誘われたけどごめんなさいして早めに寝ることにしました。
2日目
AM4:57 さて今日は昨日の方角が示してある看板の場所まで登り再びチロロ林道コースから駐車場まで戻る行程になります。
本当は4時出発予定だったけど真っ暗すぎて予定のルートに渡渉する箇所があったので危険だから少し明るいこの時間に出発です。早めに寝たおかげで昨日の疲労はなく意外と大丈夫でした。
幌尻山荘の裏に道はあります。
六ノ沢はかなり流れの速い川で落ちないように渡渉を繰り返していきます。といいながら結局落ちましたけどね。浅い場所だったので良かった。
ピンクテープが見当たらず何回か間違った岩に乗ってしまいます。
渡渉を終えると生い茂った笹薮にたどり着きます。
一体どこに登山道あるのかと思いますが地面をよーく見るとトレースがあるのでそれをたどって進むことになります。
しかも急登で結構ぐちゃぐちゃした泥なので滑って中々登るのが難しい難所でした。
ハイマツの地帯まで来ると枝をひとつひとつ跨ぎながら進んで行きますが、この辺は比較的分かりやすい道迷いの心配はいらないでしょう。
それが終わると岩登りが始まるので、脚を踏み外さないようにゆっくりと慎重に進むことになります。
ハイマツ漕ぎ&岩登りになれてきましたが、兎に角道が分かりづらい。
ちょっと陰に入ってしまっているけど幌尻岳がバーン!と目の前にその大きな姿を見せてくれました。
AM7:40 昨日の看板がある所まで戻ってくることが出来ました。あれだけ急で足場が不安定だったら下りで行くのはかなり危険だと思いました。何故看板に山荘の方角を書いていなかったかは事故を減らす為なのかもしれませんね。
ここで休憩している時に気づいたのですが川に落ちて濡れた靴がここに来るまでに自分の熱で乾いていました。どんだけ体が熱かったんだろう。
ヌカビラ岳までは暫く稜線を辿っていくだけなのでゆっくり景色を楽しみました。
ベリー系の実でしょうか。おいしそう。
一気に高度を下げていきます。
帰りの二ノ沢は行きとはまた違った感じがして2回目も楽しめました。
基本的に同じ道を通ると飽きるタイプなんですがね。
最早SASUKEです。
AM11:15 北電の取水ダムまで来たので最後はながーい林道を歩くだけ。
渡渉、急登、岩登り、ハイマツ漕ぎ、泥道といった幾多の困難を乗り越えた後だと凄く歩きやすいと感じてしまいます。快適すぎる。
PM12:38 第二ゲートまで来たので下山完了になります。
とにかく長すぎる山行で疲労困憊ですが、その分達成感は半端ではなかった。
車の中に置いてきたコーラで一発キメました。
温かったですが登山をした後はとんでもない爽快感ですよ。
他の百名山では電波が届く所もあるそうですが、幌尻岳付近は届いていないので注意です。
注意点
- ピンクテープが分かりづらいので見失ったら立ち止まり地図を確認したり、引き返しましょう。
- 山荘は完全予約制になっているので予約しておきましょう。また食事や寝具の提供がないので持参しましょう。
- 渡渉をするので濡れたらダメな装備はビニールや防水バッグに入れておきましょう。
- 食料や寝具を持って急登や渡渉、岩登り、ハイマツ漕ぎしながら長距離移動しなければならないので十分な体力が必要になります。
- 日高山脈には人を襲った熊がいるので熊スプレーは必要になります。
- 幌尻岳付近は電波が届いていないです。
幌尻岳の周辺施設
最後に
日本百名山9座目で最難関の幌尻岳に挑戦は、登山を始めたばかりの者からしたら無謀なことだと思ったりもしたんですが、無理なら引き返すつもりでいたのでやるだけやってみようと気持ちでした。
結果は天候に恵まれて事故や遭難といったこともなく無事に登頂し下山もできましたが、大きな課題も見つかったなといった具合です。
体力面ではギリギリな場面があり気合でなんとかしていた部分があったので、長い距離がいる山は事前にトレーニングを積んでおいてより気持ちに余裕をもって登山を楽しみたいなと思います。